無店舗型性風俗特殊営業をわかりやすく解説
「デリヘルを開業したいけれど、無店舗型性風俗特殊営業と店舗型性風俗特殊営業の違いがよくわからない」「ソープランドやマットヘルスとは何が違うの?」——この記事では、これから無店舗型での開業を考えている方に向けて、風営法上の区分の違いを整理して解説します。
1. 結論:デリヘルは「無店舗型性風俗特殊営業1号」
先に結論からお伝えします。いわゆる「デリヘル」は、風営法上「無店舗型性風俗特殊営業1号」に分類されます。お客様の自宅やホテルなど、人の住居・宿泊施設に女性を派遣して接触を伴うサービスを提供する形態であり、「店舗を構えない」点が最大の特徴です。
| 業態 | 区分 | 店舗の有無 |
|---|---|---|
| デリヘル | 無店舗型性風俗特殊営業1号 | なし(事務所は届出義務あり) |
| ソープランド | 店舗型性風俗特殊営業1号 | あり(浴場業の施設) |
| マットヘルス/ファッションヘルス | 店舗型性風俗特殊営業2号 | あり(個室) |
これから個人事業主として開業する場合、後述の理由により実質的に選べるのは無店舗型(デリヘル)か映像送信型がほとんどです。
2. 無店舗型性風俗特殊営業とは
風営法2条7項では、無店舗型性風俗特殊営業を次の2種類に区分しています。
- 1号営業:人の住居または宿泊施設において、異性の客の性的好奇心に応じて接触する役務を提供する者を、客の依頼を受けて派遣する営業(いわゆるデリヘル)
- 2号営業:客の依頼を受けて、性的好奇心をそそる物品を配達・貸付する営業(アダルトグッズの通信販売など)
無店舗型である1号営業を営もうとする者は、風営法31条の2に基づき、営業開始の10日前までに、事務所(事務所がない場合は住所)の所在地を管轄する公安委員会へ届出書を提出する必要があります。許可制ではなく届出制である点が、風俗営業(キャバクラ等)との大きな違いです。
無店舗型は「店舗を持たない」のが条件ですが、お客様からの電話受付や女性の待機のための「受付所」「待機所」を設ける場合は、その所在地も届出事項に含める必要があります(風営法31条の2第1項7号)。
3. 店舗型性風俗特殊営業とは(6区分)
一方、店舗型性風俗特殊営業は風営法2条6項で1号から6号まで定められています。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1号営業 | 浴場業の施設として個室を設け、接触役務を提供 | ソープランド |
| 2号営業 | 個室を設け、接触役務を提供(1号を除く) | ファッションヘルス、マットヘルス |
| 3号営業 | 裸体等を見せる興行場 | 個室ビデオ、ストリップ劇場 |
| 4号営業 | 異性同伴客の宿泊・休憩施設 | ラブホテル、モーテル |
| 5号営業 | 性的好奇心をそそる物品の販売・貸付 | アダルトショップ |
| 6号営業 | その他政令で定めるもの | 出会い系喫茶 |
4. 比較:デリヘル vs ソープランド vs マットヘルス
開業を考える方が特に混同しやすい3業態を比較します。
| デリヘル | ソープランド | マットヘルス | |
|---|---|---|---|
| 区分 | 無店舗型1号 | 店舗型1号 | 店舗型2号 |
| 店舗 | 不要 | 必須(浴場業の許可も必要) | 必須(個室) |
| 新規開業 | 原則どこでも可能 | ほぼ不可能(既得権のみ) | ほぼ不可能(既得権のみ) |
| 届出手数料 | 3,400円 | 11,900円 | 11,900円 |
| 主な根拠条文 | 風営法2条7項1号 | 風営法2条6項1号 | 風営法2条6項2号 |
条文上の線引きはシンプルで、「浴場業(公衆浴場の許可)を伴うかどうか」がソープランドとマットヘルスを分けるポイントです。浴場業を伴えば1号、伴わなければ2号、という整理になります。
📎 デリヘル開業の届出全体の流れは、柱記事「デリヘル開業届出 完全ガイド」で詳しく解説しています。あわせてご確認ください。
5. 店舗型は新規開業がほぼ不可能な理由
「それならソープランドやマットヘルスで開業すればいいのでは」と思う方もいるかもしれませんが、現実的には店舗型での新規開業はほぼ不可能です。法律で一律に禁止されているわけではなく、次の仕組みが重なっているためです。
- 条例による地域規制:風営法28条に基づき、各自治体の条例で学校・病院等の周囲200m以内などが禁止区域とされ、さらに営業可能地域を商業地域のごく一部に限定している自治体がほとんどです。
- 建築基準法の制限:性風俗関連特殊営業の用途の建物は、商業地域以外には建築できません。これは用途地域規制の中でも最も厳しい部類に入ります。
- 既得権制度:条例施行前から営業していた店舗だけが「既得権」として営業継続を認められており、新規にゼロから出店できる土地はほぼ残っていません。さらに既存店が廃業・営業廃止命令を受けると、その既得権自体が消滅し、同じ場所であっても次の人は新規に届出できなくなります。
「無店舗型として届出をしているのに、実態は固定の部屋でお客様を待たせて営業している」といったケースは、実態が店舗型とみなされ違法となるリスクがあります。無店舗型はあくまで「派遣」が前提です。
こうした事情から、個人事業主が現実的に選べる選択肢は、無店舗型性風俗特殊営業(デリヘル)か、映像送信型性風俗特殊営業(アダルト配信等)にほぼ限られているのが実情です。
6. 豆知識:遊郭との違い
「遊郭」という言葉を比較対象として思い浮かべる方もいるかもしれませんが、これは現行の風営法には存在しない概念です。遊郭はかつての公娼制度のもとで存在した形態で、1956年制定の売春防止法により公娼制度自体が廃止されています。現在「遊郭」を名乗る施設があったとしても、法的にはソープランド(店舗型1号営業)など別の区分で届出されているものであり、開業を検討する際の比較対象にはなりません。
7. 自分の業態がどちらに該当するか迷ったら
「派遣型だけど、お客様を集める場所(受付所)も用意したい」「ホテルと提携して営業したい」など、形態によっては無店舗型か店舗型かの判断が分かれるケースもあります。実態が条文上の区分とずれていると、無届営業や別業態としての届出義務違反に問われるリスクがあるため、判断に迷う場合は専門家に確認することをおすすめします。
Q. ホテルヘルス(ホテル提携型)は無店舗型ですか?
Q. メンズエステは無店舗型ですか?
8. まとめ
デリヘルは「無店舗型性風俗特殊営業1号」に区分され、ソープランドやマットヘルスといった店舗型とは異なり、店舗を持たずに開業できる点が大きな特徴です。さらに店舗型は条例規制と既得権制度により新規開業がほぼ不可能なため、これから個人で開業する方にとって無店舗型は現実的な選択肢といえます。一方で、実態と届出区分がずれていると違法営業とみなされるリスクもあるため、不安な点は専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

